調理加工が食品成分に与える影響の検討(次世代センシングシステム研究所/管理栄養学科 准教授 大澤絢子)
次世代センシングシステム研究所/管理栄養学科 大澤絢子 准教授
センシング技術を活用して食品加工時に栄養成分や機能性成分に生じる変化を評価し、食事生産システムの最適化を目指しています。
「センシング(sensing)」とは、センサー(感知器)を利用して、音・圧力・温度など様々な情報を物理学的、化学的または生物学的に計測し、数値化することです。
現在、世界中で「持続可能な開発目標(SDGs)」に取り組まれていますが、人の生活環境を取り巻く様々な天然物や化学物質、食品等を分析・計測し、人の健康や生活の質(QOL)、生活環境等にどのような影響があるのかを評価していくことは、SDGsの取り組みの重要な基礎的知見となります。そこで次世代センシングシステム研究所では、応用化学科、応用バイオ科学科、管理栄養学科の学科間を超えた様々な視点から課題を提起し、その解決に向けて種々の天然物や化学物質、食品等のセンシングと評価を実施して、人の健康の維持増進や生活環境保全につながる手法・アイディアの提案を行っています。
例えば、管理栄養学科に所属する私は「食品環境に関わるセンシングと評価」をテーマに、特定給食施設で生産する給食のセンシングと評価を行っています。医療施設や高齢者・介護保険施設、学校、事業所などで提供される「給食」は、少ない人数で多くの人に栄養バランスの取れた食事を提供し、喫食者の健康を保持・増進することができる効率的な健康増進システムです。一方で、百~数千人分の大量の食材を一括で調理するため、食材の加熱に要する時間や温度上昇速度、食材からの放水量、調理した後の保管時間等が家庭などで少人数分を調理するときとは異なり、加熱により分解されやすい成分や水溶性栄養成分の最終的な含有量が異なる可能性があります(例:図1)。そこで、給食で大量に食事を生産するときに、各栄養成分にどのような変化が生じるかを科学的に数値化することにより、給食の実際の栄養価を評価するとともに、より栄養価が優れた給食を効率的に作るためにはどのようにすべきかを検討しています。
これらの研究の成果が、すべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進していくことにつながることを願っています。