スマートハウスの通信技術でカーボンニュートラル実現に貢献する(スマートハウス研究センター センター長 一色正男)
スマートハウス研究センターは、スマートハウスやIoT(※1)の通信規格である「ECHONET Lite(※2)」を活用し、ビジネスの最前線で活躍している企業と連携して研究を行っています。今回は、共同研究契約を締結しているリンナイ株式会社との連携事例をご紹介します。
スマートハウス研究センター センター長 一色正男
神奈川工科大学 スマートハウス研究センターでは、経済産業省の支援を受けて、一般社団法人エコーネットコンソーシアムと連携し、スマートハウスの家電機器を制御する日本発の通信規格であるECHONET Liteの国際標準化活動を行ってきました。
現在は、国際標準規格として採用されており、既に省エネ住宅での標準実装などにより、1億台以上の機器が導入されています。
これまで住宅の家電機器や設備機器は省エネ化を進めてきましたが、カーボンニュートラル実現には、さらに再生可能エネルギーの活用が不可欠となります。そのためには再生可能エネルギーを創り出したり貯めたり、他の機器と連携して機器制御を行うことが重要になってきます。そのための重要な通信技術がECHONET Liteです。
キャンパス内にあるHEMS(ECHONET Lite)認証支援センターには、HEMS機器の開発企業がいつでも相互接続試験を行える環境が整備されており、様々な企業と共同で研究開発を進めています。今回はそのひとつ、リンナイ株式会社との共同研究成果をご紹介します。
太陽光発電を活用したエネルギーマネジメント事例
リンナイ株式会社が開発・販売している、ハイブリッド(ガスと電気)と蓄電池を連携・制御した実験を行っています。本実験は大分県の某住宅で実施しておりますが、事前の各機器の動作検証などをHEMS認証支援センターで行っています。
図1(左)はその実験の構成図で、黄色線がECHONET Lite通信です。ハイブリッド給湯機以外はリンナイ製品ではありませんが、ECHONET Lite通信を行うことで簡単にネットワーク化することができます。これらの機器を連携・制御し、再生可能エネルギー(今回は太陽光発電)を最大限活用するための実験を行っています。
図1 左:実験の機器構成図(右側給湯機器がリンナイ製品) 右:実験データの一部
今回の実験では1年間さまざまなデータを収集し、検証・分析を行っています。右図はその検証結果の一例です。昼間の太陽光発電を給湯用に活用する際に、蓄電池を利用してエネルギーを貯めることでより効率的な運用をするための検証を行っており、冬場において、太陽光発電の活用率が、蓄電池なし42%、蓄電池あり78%と最大で36%改善効果が確認出来ました。
今後も更に効率的な運用を行うための研究を進めていきます。
研究発表をした論文はこちらからご覧いただけます。
スマートハウス研究センターでは今後も、本研究を通じてさまざまな企業との連携を推進していきます。
※1 IoT:モノ(物)のインターネット。家電製品も含め様々な機器をネットワーク化すること。例えばエアコンだと、本来空間の空質をコントロールする機能をもっていますが、エアコンが取得している外気温や室内温度の情報と、外部の天気情報を利用して最適な制御をするなどが挙げられます。このようにインターネットで様々なモノが繋がることで新しい価値を生み出すことが期待されています。
※2 ECHONET Lite:異なる企業が提供するIoT家電、住宅設備、創エネ・蓄エネ設備での情報のやり取りを可能にするための"共通のことば"。インターネットを通じて様々なメーカーのIoT家電、住宅設備、創エネ・蓄エネ設備を制御するには、同じインターフェース(共通のことば)が搭載されている必要があります。その役割を果たす通信規格がECHONET Liteです。ECHONET LiteはISO/IEO14543-4-3およびIEC62394として国際標準規格登録されています。
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