先進eスポーツ研究センターの取り組み―FPS競技者のレベルを特定したり、大手メーカーのヘッドホン開発に貢献したりしています―(先進eスポーツ研究センター/情報ネットワーク・コミュニケーション学科 教授 塩川茂樹 先進eスポーツ研究センター/情報メディア学科 准教授 上田麻理)
先進eスポーツ研究センターでは、情報通信技術やスポーツ情報科学の活用によりeスポーツの価値を確立するための研究に取り組んでいます。今回は、First-person shooter(FPS)におけるマウス操作と競技レベルの関係に関する研究を紹介します。
また、eスポーツ好きな神奈川工科大学の学生たちが、製品開発に貢献している好例を紹介します。
先進eスポーツ研究センター/情報ネットワーク・コミュニケーション学科 教授 塩川茂樹
先進eスポーツ研究センター/情報メディア学科 准教授 上田麻理
先進eスポーツ研究センターとは
先進eスポーツ研究センターでは、情報通信技術やスポーツ情報科学の活用によりeスポーツの価値を確立するための研究に取り組んでいます。
2024年3月には地域の"つながり"をキーコンセプトとした「KAIT TOMN(カイトタウン、図1)」が完成し、eスポーツに関する競技施設(図2)や研究施設が整います。これらの設備を活用して益々充実した研究を進めていく予定です。
図1 KAIT TOWN外観(イメージ)
図2 eスポーツ競技施設(イメージ)
FPSでのマウス操作と競技レベルの関係性を検証
今回は、情報通信技術を活用した研究としてFirst-person shooter(FPS)におけるマウス操作と競技レベルの関係についての検証を紹介します。FPSとは一人称シューティング競技のことで、ゲームの世界を競技者の視点で移動するのが特徴です。
マウスで視点操作を行うFPSでは、攻撃対象に素早く正確に視点を移動させるために効率の良いマウス操作が求められます。そこで実際の競技におけるマウス操作軌跡を可視化し、競技レベルとの関連性について調べました。図3はその結果です。高得点者のマウスの軌跡は低得点者の軌跡と比較して、横に広がりを持ち、かつ同じような場所を移動させていることが分かります。
図3 マウスの操作軌跡
現在はこれらの実験結果を活用し、機械学習によってマウス操作軌跡から競技者や競技者レベルを特定する研究を進めています。
学生たちと一緒に「音・聴覚」をベースとしたeスポーツ研究を提案・実践
他にも、音響工学の視点から「音・聴覚」をベースとしたeスポーツ研究を提案・実践することにも、学生と一緒に取り組んでいます。
聴覚情報を使ってFPSゲームが上達する研究については以前紹介しました。それらの研究成果を発表した学生が学会等で受賞することも増え、先進eスポーツ研究センターの取り組みが少しずつ知られるようになり、音響機器の開発にも貢献する機会が増えてきました。
「eスポーツ競技中にぜひ、ヘッドホン(やスピーカーなど)を試して欲しい」「発売前に学生の感想が聞きたい」と、大手の音響機器メーカーやヘッドホン開発を始めた大手化学メーカーなどが神奈川工科大学まで足を運ばれる事例が増えてきています。
企業の方は「これeスポーツで使えそう?」「eスポーツで使ったときの率直な感想が知りたい」「音質はどう?」と言った質問を学生に投げかけます。学生たちはeスポーツが好きだからこそ思いつく視点で、大人が机上で考えただけでは浮かばないようなすごく良いことを言ってくれます。(感想は企業秘密でご紹介できないのですが...)
「発売前のヘッドホンを試してみたい」。携わるきっかけは個人的な興味だとしても、企業への素晴らしい貢献につながることがあります。これからも、先進eスポーツ研究センターと神奈川工科大学の学生たちの活躍にご期待ください。
図4 発売前のヘッドホンを試して音響機器の開発にも貢献
聴覚情報を使ってFPSゲームが上達する研究について
▼関連するSDGs
3 すべての人に健康と福祉を
4 質の高い教育をみんなに
8 働きがいも経済成長も
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
11 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任 つかう責任
17 パートナーシップで目標を達成しよう