女性の性周期を簡単・正確にとらえる ―性周期の体調に合わせた食事摂取の在り方の検討にむけて―(ヒューマンメディア研究センター/管理栄養学科 准教授 澤井 明香)
性周期にまつわる体調不良に振り回されないで、部活もプールも温泉旅行も楽しみたいし、もっと勉強を頑張りたい。女性の皆さん、そんな風に思いませんか?
私たちは性周期による体調不良を食生活の面から支える方法を検討しています。
そのための第一歩として「できるだけ簡単に、高い精度で、性周期のリズムを知るにはどうすれば良いか」を考えて、企業と下着に装着するタイプの温度センサーの開発に取り組んでいます。さらに、温度センサーで得た温度リズムと食事調査の結果から、性周期にまつわる体調不良を軽減する食生活や生活習慣を調べています。
ヒューマンメディア研究センター/管理栄養学科 准教授 澤井 明香
はじめに
女性の多くは性周期で体調が変わります。例えば、月経前のだるさ、月経中の腹痛みや貧血などを起こす人が多くいます。
栄養面では、月経中は鉄分の多めの摂取が必要です。また、最近私たちは月経前に血中アミノ酸濃度が変化することを見つけています1)。
生涯の半分位を性周期のリズムの中で過ごす女性が、毎日朗らかに暮らすためには、性周期のリズム(低温期と高温期、排卵や月経)を通じて、「身体を休める時期」と「頑張る時期」を、事前になるべく正確に把握できた方が良いですよね。さらにその情報は、労が少なく生活に溶け込みながら得られるように「できるだけ簡単に、高い精度で」知りたいところです。
研究のねらいと研究方法
研究では、下着に装着して睡眠中に無意識のうちに体内リズムを測ることができる温度センサー「わたしの温度® (市販品)/TOPPANエッジ社製(図1)」を使用しています。「わたしの温度®」を実際に装着して毎日過ごすことで、その精度や、どのような着け方、データの見方をすれば、より良い精度で性周期を評価できるのかについて、本学の女子学生約30名に協力してもらい、調べました。
さらに、当機の装着で得た睡眠中の温度リズムと、食事調査の結果を比較して、性周期にまつわる体調不良を予防するような食生活や生活習慣はどのようなものかを調べました。
結果
「わたしの温度®」は眠っている間に自動測定できて、横になった体勢で起床時に口腔内に入れて測定した婦人体温計での測定や、他の温度センサー装置よりも、性周期をとても高精度に分けられることがわかりました。このことは2023年10月に幕張メッセで開催されたCEATECという国際展示会で紹介し、同月の第82回日本公衆衛生学会で報告しました2)。図2は、CEATECで展示発表を行った本研究室のメンバーである4年生の学生達の様子です。
またこの研究の関連で、「わたしの温度®」で計測したデータの採用時間を基底心拍時の温度とすることでより性周期を判別しやすくなることが分かり、TOPPANエッジ社と共同出願を行いました。
図1 わたしの温度®TOPPANエッジ社製
図2 CEATECで展示発表の様子
今後の予定
「わたしの温度®」を利用して正確に分けた性周期(低温期、高温期など)をベースに、性周期の体調不良(月経前症候群や生理痛など)が酷い人とそうでない人の食生活や生活習慣を比較することで、このような症状の予防や軽減に繋がる方法を探ります3)。さらに、疲れにくい体や、イライラを軽減するための食生活などを調べて行きたいと思います。
2) 西東優心、澤井明香他.睡眠中の深部温の測定による性周期の把握と測定条件の検討、第82回日本公衆衛生学会、つくば国際会議場、2023年10月.
3) 西東優心、澤井明香、星舞衣、杤久保修.女性の性周期に伴う不定愁訴とエクオールおよび食生活・生活習慣の関係、第45回日本臨床栄養学会総会、大阪国際交流センター、2023年11月.