画像認識技術を使ったDNAの異常を検出する技術の開発(バイオメディカル研究センター/応用化学生物学科 教授 髙村 岳樹)
「インビトロ小核試験」という、細胞に何か影響を与えたときに細胞核とは別に小さな核ができるかどうかを調べる実験で、画像認識技術を使って、この小核を自動的に見つける方法について研究したものです。
バイオメディカル研究センター/応用化学生物学科 教授 髙村 岳樹
インビトロ小核試験ってなに?
インビトロ小核試験は、化学物質や放射線などが私たちの体の中の細胞にどんな影響を与えるのかを調べるために使われる実験です。細胞に何か悪い影響があると、細胞が分裂する時に小さな核(微核)ができてしまうことがあります。この小核を数えることで、その物質がどれだけ細胞にダメージを与えたのかを評価できるのです。
なぜ自動化が必要なの?
従来の小核試験では、研究者が顕微鏡で一つ一つの細胞を見て、小核を数えていました。この作業は非常に手間がかかり、人によって数え方にも違いが出てしまうという問題がありました。そこで、この研究では、コンピュータに画像を認識させて、小核を自動的に数えるシステムを開発しようとしたのです。
画像認識技術ってすごい!
画像認識技術とは、コンピュータが画像の中に何が写っているのかを理解する技術のことです。例えば、スマートフォンで写真を撮ると、顔が自動的に認識されてピントが合うのは、この技術が使われているからです。この技術を小核試験に応用することで、以下のことが期待できます。
- 客観的な評価: 人の目で数えるよりも客観的で正確な結果が得られる。
- 高効率: 大量のサンプルを短時間で処理できる。
- 標準化: 異なる研究機関でも同じ方法で評価できる。
研究でどんなことをしたの?
この研究では、まず、たくさんの微核の画像データを用意し、コンピュータに学習させました。コンピュータは、この学習を通して、小核がどのような特徴を持っているのかを学び、新しい画像の中の小核を正確に見つけることができるようになります。次に、開発したシステムを使って実際のサンプルの画像を解析し、従来の方法と比較して、その精度や効率を評価しました。
この研究の成果は?
この研究では、画像認識技術を用いた自動化システムが、従来の方法と比べて高い精度で小核を検出できることが示されました。このシステムは、今後、より多くの研究機関で利用されることで、化学物質の安全性評価などをより効率的に行うことができるようになることが期待されます。
今後の展望
この研究は、まだ発展途上であり、さらなる改善の余地があります。例えば、より複雑な背景を持つ画像に対応できるようにしたり、異なる種類の細胞にも適用できるようにしたりといった研究を今後進めていきます。
今回の研究の発表者:(左から)小池 あゆみ教授、髙村 岳樹教授、依田 ひろみ教育講師
▼関連するSDGs
3 すべての人に健康と福祉を
9 産業と技術革新の基盤をつくろう