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不快臭を除いて食品をおいしくするナノ粒子 (新物性化合物合成研究所/応用化学生物学科 教授 村山美乃)

ナノ粒子は、文字通り直径がナノメートル程度の大きさの粒子です。原子の数で表すと数個から数百個の集まりです。通常、金は金色、銀は銀色に見える金属光沢がありますが、その大きさを数ナノメートルまで小さくした金ナノ粒子は赤色、銀ナノ粒子は黄色に見えるなど、ナノ粒子にすることで金属とは異なる特性を示します。そのなかでも硫黄化合物と結びつきやすいという特性を応用して、食品から不快臭だけを選択的に除き、おいしく感じるようにする研究をしています。

新物性化合物合成研究所/応用化学生物学科 教授 村山美乃

(新物性化合物合成研究所/応用化学生物学科 教授 村山美乃)

はじめに

食品にはアミノ酸に由来する硫黄化合物が含まれていて、ごく少量ではコーヒーが焙煎された香りや玉ねぎ、シイタケ、大根などの独特の香りの由来となっています。しかし、嗅覚閾値が低いため、他の香りの成分よりも強く感じやすい特徴があり、適量を超えると他の香りをかき消してしまったり、不快に感じたりして、おいしさを損なう原因になってしまいます。特に、日本酒では温度管理が行き届かないときに、老香(ひねか)と呼ばれる不快臭が発生することがあり、日本酒の特長である華やかでフルーティーな吟醸香を損ない、商品価値が下がってしまうという課題がありました。日本酒の香りは、機器分析と官能評価を組み合わせた研究によって明らかにされており、吟醸香はエステル類、老香はポリスルファン(特にジメチルトリスルファン)に由来すると報告されています(参考文献1,2)

研究内容

活性炭は香りに寄与する化合物を吸着して取り除くために古くから使われてきましたが、日本酒からジメチルトリスルファンだけでなく、良い香りのエステル類まで吸着除去してしまうという欠点がありました。そこで、私たちは金ナノ粒子や銀ナノ粒子が硫黄化合物だけを選択的に吸着する性質を応用して、劣化してしまった日本酒から吟醸香を残して老香だけを取り除き、元のおいしさを取り戻す吸着剤を開発しました(参考文献3,4)

今後の展開

これまでの研究で、ジメチルトリスルファンの金ナノ粒子上への選択的な吸着のメカニズムや吸着剤の製造方法、再利用法、さらに、吸着後の日本酒の機器分析と官能評価を報告してきました。そして、この吸着剤を日本酒だけでなく、芋や麦から作られる本格焼酎に使うと、いままでになかった華やかな香りに変化することも分かってきています。

この吸着剤を実際に酒類の製造に使用するには、化学的な検討をさらに重ねるほかにも、食品衛生法や酒税法など法令に基づいた材料としての設計も必要となります。そのため、食品添加物として認められた材料と金ナノ粒子を組み合わせること(図)など、実用化に向けた実験を進めています。

図:食品添加物として認められている種々の材料と組み合わせて調製した金ナノ粒子

図:食品添加物として認められている種々の材料と組み合わせて調製した金ナノ粒子

参考文献

1)    磯谷敦子,宇都宮仁,神田涼子,岩田博,中野成美,日本醸造協会誌101, 125 (2006).

2)    宇都宮仁,磯谷敦子,岩田博,日本醸造協会誌,105, 106 (2010).

3)    H. Murayama, Y. Yamamoto, M. Tone, T. Hasegawa, M. Kimura, T. Ishida, A. Isogai, T. fujii, M. Okumura, M. Tokunaga, Sci. Rep., 16064 (2018).

4)      磯谷敦子,村山美乃,木村萌水,篠﨑貴旭,山本英治,藤井力,飯塚幸子,徳永信,日本醸造協会誌,114, 779 (2019).

 


▼本件に関する問い合わせ先

研究推進機構 広報担当

E-mailken-koho@mlst.kanagawa-it.ac.jp

 

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