自動運転における危険予知センシング技術の研究(工学教育研究推進機構(現:研究推進機構) 先進自動車研究所(VRI)特任教授/所長 井上 秀雄)
工学教育研究推進機構(現:研究推進機構) 先進自動車研究所(VRI) 井上 秀雄 特任教授/所長
「うまいドライバは,この先に何が起こるかを予測して安全に運転します」
自動運転・運転支援システムに,このような危険予知のセンシングと知能を持たせる研究をしています!
地方や市街地の道路では,現在の自動車専用道路向けの自動運転技術だけでは対処できない状況があります。典型的な例として,見えない陰からの歩行者の飛出しや,前方の自転車の行動予測など,リスクを予測しての対応,いわば「かもしれない運転」技術が必要です。
我々の研究(日本の科学技術振興機構(JST)採択のSイノベーションプロジェクト)では,リスクを定量的に表現するために,約140,000万件にのぼるヒヤリハットデータを学習することで,13項目の走行危険因子(表1)からなる情報モデルとポテンシャルフィールドを用いた物理モデルによりリスクを予測することで,「かもしれない運転」が可能であることが実験車で検証できました(図1)。
この研究を更に進め,カメラ等の周辺監視センサと地図情報から,単に,走路や障害物を認識するだけでなく,この13項目の走行危険因子を認識し,瞬時,瞬時のリスク値(Risk Value)を導き出す「危険予知センシング技術」を開発中です。
例えば,周辺歩行者が何人ぐらい,また,駐車車両が何台ぐらい連なっていると危ないとか,歩道の構造では,ちゃんと縁石があると安全で,ただ道路に白線で区分されているだけだと危ないなど(図2),13項目の走行危険因子で環境リスク値(Risk Value)を算出します。危険予知制御システムを図3に示します。
現在,シミュレーションで作り出したランダムな映像シーン毎に,カメラ認識等で検出したリスク値(Risk Value)の妥当性の検証を進めています(図4)。
今後,本研究は産業界とも連携し,高齢者の運転応力の低下をサポートし安全・安心で快適なクルマ社会に貢献していきたいと思っています。