AIを利用した医用画像診断支援システムに関する研究(電気電子情報工学科/次世代センシングシステム研究所 教授 武尾 英哉)
病院で撮影されたCTやMRI画像をAI技術を利用して自動解析し、医師の診断をサポートする情報を提供するシステムの研究を行っています。
電気電子情報工学科/次世代センシングシステム研究所 武尾 英哉 教授
病院で撮影されたCT、MRI画像、X線画像(レントゲン写真)や超音波画像などの画像を医用画像と呼びます。これら医用画像は、放射線科専門医によって診断(これを特に読影と言います)され、患者さんの診察や治療に役立てられます。
しかし、専門医であってもたくさんの医用画像を読影する業務においては、どうしても見落としが避けられません。一般的に医師の正診率は約9割と言われており、10%くらいの見落としがあると言われています。
そこで、医師の見落としを防止する意味で、コンピュータによる画像解析によって病気の疑いのある場所を自動的に検出したり、良性(特に問題ないもの)か悪性(いわゆる癌)を判断するコンピュータ支援画像診断ム(CAD: Computer-Aided Diagnosis)という研究分野やシステムの開発が活発に行われています。
本学では、この研究分野にも大変力を入れており、特にAI技術をCADに導入しています。以下では、最近の2つのトピックについて紹介します。
最初は、乳がんのマンモグラフィ(乳房X線画像)における良悪性鑑別CADです。マンモグラフィにおける良悪性の判断は専門医でも難しく、その違いの特徴を捉えるには非常にたくさんの読影経験が必要です。一方AIは、過去の多くの画像を用いて学習させることで、特徴を自動抽出し、高精度な判別精度を得ることが可能です。最新の深層学習(Deep Learning)を用い、構成や各種パラメータの最適化によって実現しています。また、学習用の多くの画像データを用いる必要があるため、病院と連携して研究を進めています。
二つ目は、前立腺がんの診断のためのCADです。一般的に前立腺がんの診は、血液検査によって得られるPSA値によって診断されますが、PSA値は前立腺の体積に依存します。そこで、PSA値を前立腺の体積で除するPSA densityを算出する必要があります。そこで、高精度な体積抽出のためにU-Netと呼ばれるAI技術を導入することで高精度化を実現させました。なお、AIはMATLAB環境とPython環境を用いています。