スマートスピーカーを用いた対話型漫才自動生成システムの提案(情報工学科/先進AI研究所 准教授 大塚 真吾)
本研究では、高齢者や若者を対象としてQuality of Life(QOL)を向上させることを目的とし、具体的にはスマートスピーカーを用いて人間と対話をしながら、漫才の自動生成、および、実演を行うシステムの提案を行う。
情報工学科/先進AI研究所 大塚 真吾 准教授
医療の発展などに伴い平均年齢が上昇している一方で、普段の生活の動作が1人ででき健康的な日常が送れる期間である健康寿命との差は、2016年では男性で8.84歳、女性で12.35歳あり、今後、平均寿命が延びるにつれてこの差が拡大すれば、健康上の問題だけではなく医療費や介護費の増加による家計へのさらなる影響も懸念される。その一方、高齢者を支える世代である若者に関しては、超高齢化社会に対する閉塞感やあきらめ感、日本の社会に蔓延している同調圧力などが原因で常にストレスを抱える状況が続き、その結果、精神疾患を抱える人の増加や、自分から考えて行動できない人も増えている。このような状況の中、Quality of Life(QOL)が脚光を浴びており、高齢者に関しては健康寿命を伸ばす取り組み、若者に関してはなるべくストレスを与えずに生きていくための支援に注目が集まっている。その中でも「笑うこと」はストレスの軽減に繋がり、誰でも手軽に取り組むことが可能なため、注目が集まっている。また、近年のAIブームやロボット技術の発展により、コンピュータが人間や社会と融合することに違和感が無くなりつつある。そこで、我々の研究室では、高齢者や若者を対象としてQOLを向上させることを目的とし、具体的にはスマートスピーカーを用いて人間と対話をしながら、漫才の自動生成、および、実演を行うシステムの提案を行っている。
我々の構築した対話型漫才自動生成システムを図に示す。今回用いたスマートスピーカーはLINE Clovaである。まず、LINEが運営しているClova Developer Center βというサイトにおいて各種設定(スキル登録)を行う。Clovaで我々が作成したプログラムを起動させるためには、Clovaに話かけるプログラム名(スキル名)を登録する必要があり、今回は「大塚研ニュース漫才」とした。プログラム(スキル)を起動させると各種設定で指定したURLに置かれたプログラムが起動する。今回はPHP言語でプログラムを作成した。
ユーザがClovaに「ねぇ、クローバ」と話かけ、その後「大塚研ニュース漫才を起動して」と言うと、Clovaから簡単な説明があり、ユーザはClovaに漫才を作ってもらうか再生させるのかを指示することができる。ユーザが「〇〇漫才を作って」と指示した場合は、漫才自動生成サーバに対して「○○」をお題として漫才を自動生成させるスクリプトを実行し、XML形式のテキストファイルで漫才台本が生成される。このファイルを元に音声合成ソフト(AITalk)を用いて音声ファイルに変換を行う。また、漫才自動生成サーバではヘッドラインニュースを定期的に取得しているため、「ヘッドライトの漫才を作って」と指示した場合は、最新のヘッドラインニュースから漫才台本を生成することが可能である。
その後、ユーザが「○○の漫才を聞かせて」と指示した場合は、漫才自動生成サーバから生成された音声ファイルをダウンロードし、そのファイルをClovaが再生することで、ユーザは漫才を聞くことができる。
このように、ユーザはClovaとの対話だけで、漫才の台本、および、音声ファイルを生成することが可能になり、高齢者でもスマートフォンやPCなどを用いることなく、手軽に好みの漫才を聞くことが可能となる。
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