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ミカヅキモから植物進化の謎に迫る(応用バイオ科学科/生物有機科学研究所 教授 村田 隆)

最近の遺伝子解析技術の進歩により、ミカヅキモの仲間は陸上の植物に最も近縁な生物であることがわかりました。研究室ではミカヅキモの細胞分裂を調べることにより植物の進化を解明しようとしています。

ミカヅキモは水のきれいな田んぼや池に生息する緑藻の仲間で、その三日月状の姿は多くの人に知られています(図1)。最近10年ほどの間にDNA解析技術が飛躍的に進歩した結果、ミカヅキモの仲間(接合藻類)は普段目にする陸上の植物に最も近縁なことがわかりました。このことは、ミカヅキモと陸上の植物は同じ祖先から進化した兄弟であることを意味します(図2)。そのため、ミカヅキモを研究すれば陸上植物がどのような道筋をたどって進化してきたか有力な手がかりが得られます。私たちはミカヅキモの仲間を培養し解析することにより生物多様性の理解に貢献したいと考えています。

応用バイオ科学科/生物有機科学研究所 村田 隆 教授

図1

図2

陸上の植物は細胞分裂の時に仕切り(細胞板)を作って分裂します。ひとたび仕切りを作ると娘細胞の位置関係は固定されてしまうため、陸上植物は独自の分裂軸制御システムを持っています。このシステムは植物が陸上で多細胞の複雑な構造を作るために必要ですが、ミカヅキモがどの程度備えているかは良くわかっていません。ミカヅキモで細胞分裂システムの解析をするためには、細胞に遺伝子導入を行う技術、様々な細胞内構造を顕微鏡の下で見えるように蛍光で標識する技術を開発する必要がありますが、ミカヅキモではこれらの技術は発展途上です。

私たちが得意とする顕微鏡技術をつかって、学外のさまざまな専門家との共同研究により、ミカヅキモの細胞内構造に緑色蛍光タンパク質(GFP)などの標識をつけて見ることができるようになりました。また、ミカヅキモの細胞膜を蛍光で光らせて観察することは難しかったのですが、蛍光色素とデキストランを結合させたものが細胞膜をきれいに染色することを発見しました。これにより、細胞膜と内部構造を標識したミカヅキモで分裂の過程を追跡することができるようになりました(図3)。今後は、細胞分裂に働く様々な遺伝子の働きをミカヅキモで調べることにより、陸上植物の細胞がどのように進化したか明らかになることが期待できます。

図3


▼本件に関する問い合わせ先

研究推進機構 広報担当

E-mailken-koho@ccml.kanagawa-it.ac.jp

 

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