心地よい環境の創生(心地よい揺れに関する研究)(機械工学科/環境科学技術研究所 教授 川島 豪)
機械工学科/環境科学技術研究所 川島 豪 教授
当研究室では、持続可能な社会を目指し、「1/fのゆらぎ」を用いて環境が一定の時に比べて環境を揺らがすことで心地よい空間を創出し、平均的にみて省エネを達成させることを目標に、心地よい揺れを研究しています。
皆さんは「1/fのゆらぎ」を知っていますか。そよ風、小川のせせらぎ、波打ち際に寄せる穏やかな波など自然界にある心地よい動きや変化を周波数分析すると、各周波数の波の大きさ2乗が周波数に反比例するというもので、東京工業大学の武者先生が見つけられました。当研究室では、持続可能な社会を目指して再生可能エネルギーの有効利用に関する研究をしています。太陽光に代表される再生可能エネルギーは天候に左右され、安定してエネルギーを取り出すことはできません。したがって、再生可能エネルギーを有効利用するには、蓄電技術の開発が重要となります。併せて無駄に使わない省エネ技術の開発も重要となります。そこで、この「1/fのゆらぎ」を用いて環境が一定の時に比べて環境を揺らがすことで心地よい空間を創出し、平均的にみて省エネを達成させることを目標に、心地よい揺れを研究しています。
まず、心地よい揺れを実現していると思われるロッキングチェアに注目し、図1に示すロッキングチェア駆動装置を開発しました。そして、1/fの関係を含む様々な波形を創り、その波形でロッキングチェアを駆動し、その時の揺れの印象をアンケート調査しました。その結果、全ての揺れが心地よいわけではありませんでした。そこで、心地よい揺れには「1/f」だけでなく別の要素も関係していると考え、現在、研究を続けています。一方、実験した波形の中で、最も心地よく感じられたのは、一定の振動数の正弦波の振幅を1/fの関係で揺らがせるものでした。そこで、この波形を実現するアクティブスイングチェア(図2)やアクティブロッキングチェア(図3)を開発し、心地よさを体感できるようにしました。ただし、このロッキングチェアはいつも同じ波形で揺れるので飽きてくるという問題を有しています。そこで、ロッキングチェアに座っている人の心拍ゆらぎを用いて揺れを変化させるアクティブロッキングチェアも開発し、その揺れが1/fのゆらぎに近いものであることを確認しました。