AIで本学のソーラーパネルの発電量を予測(機械工学科/先進太陽エネルギー利用研究所 教授 川島 豪 )
二酸化炭素に代表される温室効果ガスを排出しない太陽光発電は有望な電力源である。しかし、天候により発電量が変動する問題がある。そこで、人工知能を用いて発電量を予測し、有効に利用するシステムを開発している。
世界各地で起きている異常気象の原因ともいわれている地球温暖化、その原因である温室効果ガス(二酸化炭素など)の削減は緊急を要する課題である。そのためには、エネルギー源を、二酸化炭素を排出する化石燃料から、太陽光、太陽熱、風力、潮流、海洋温度差、地熱などの再生可能エネルギーへ変えていく必要がある。
機械工学科/先進太陽エネルギー利用研究所 川島 豪 教授
しかし、様々な問題がある。例えば、火力発電所から各工場、各家庭に電気を送る送電網を考える。日本の送電網は、火力発電所や原子力発電所(原子力発電所は二酸化炭素を排出しない)などの大きな発電所から消費場所に電力を送る放射状の構造になっている。しかし、多くの再生可能エネルギーは、太陽光でも風力でも潮流でも海洋温度差でも太陽からのエネルギーであり、地球上の広い範囲に分布している。しかし、そのエネルギー密度は小さい(大きければ人間が生活できない)。したがって、これらの再生可能エネルギーを有効利用するためには発電所を広範囲に分布させる必要があり、広く分布している消費場所と網目状の電力網(スマートグリッド、マイクログリッド)を構築する必要があるが、現在の送電網を変更することは簡単でない。さらに、天候により発電量が左右されるという問題もある。
図1_研究所の屋上に設置されているソーラーパネル
その解決策の1つは電気の需要と供給をその場所、地域ごとバランスさせるために蓄電池を利用することである。すなわち、電力の地産地消である。しかし、多くの蓄電池を設置するとコスト増となり、電力料金が高くなる。そこで、先進太陽エネルギー利用研究所では、ソーラーパネルで発電した電力を使用しながら最適に蓄電するため、研究所で常時測定しているソーラーパネル(図1)の発電量と日射量や風力の気象情報(図2)に関するビックデータを利用して発電量を予測するシステムの構築を目指している。現在は、Deep Learning を適用して将来の日射量を推測するAIを構築したところである。それまでのデータを基に1時間後の日射量を次々に予測した結果を図3に示す。青線が観測値、赤線が予測値である。ほぼ予測できていることが確認できる。このシステムに日射量と発電量の関係を組み入れて発電量を予測できるシステムに発展させていく。さらに、AIによる電力需要予測を組み入れ、電力マネージメントシステムを構築していく。
図2_気象データ観測用センサ類