産後のお母さんの心を救え!~看護学・人間工学・脳科学の融合による産後うつ可視化への挑戦~(健康生命科学研究所/健康医療科学部 看護学科 助教 青木 真希子)
分かりそうで分からない自分の心。
自分の心の状態への気づきが、セルフケアの第一歩です。
脳の働きを簡易な装置で計測し、自分の心の状態への気づきのきっかけづくりを研究しています。心の状態が苦しい産後のお母さんを支援する方法の確立を目指しています。
10人に1人が経験する産後のお母さんの著しい心の落ち込み
妊娠そして出産は女性のライフサイクルの中で一大イベントです。出産は新しい生命の誕生の瞬間であり、喜びにあふれるイベントですが、妊娠・出産期間中の急激なホルモンバランスの変調や母親になるという重圧から、心に著しい落ち込みが生じやすい時期でもあります。
アンケートによって自分の心の状態を見える化し、そして対話を通じてセルフケアを促して心の落ち込みを支援する取り組みが行われています。しかし、アンケートだけでは、複雑な心の機微を見落とす可能性があります。そこで私は、産後のお母さんの複雑な心の状態を評価する方法(機器などを用いた方法)の実現に向けた研究を行っています。
脳科学と看護学の接点
私は、人間工学や脳科学などの科学的な手法を看護学に融合させて、エビデンスに基づく看護学の構築を目指しています。例えば、心の病気の代表例であるうつ病の兆候と脳の活動状態の変化が密接に関連していることが最新の脳科学の研究からわかってきています。私の研究では、このような脳科学の最新の知見を産後のお母さんに展開して、妊娠期から産後に生じる大きな心の変化の特徴づけに挑戦しています。
健康生命科学研究所/ 健康医療科学部 看護学科 青木 真希子助教
分野を超えた課題解決型の研究
本学には、ヒトの行動を数値化し解析する人間工学のスペシャリストの先生方を擁しており、密接な連携体制を構築しています。また、計測した結果からヒトの生理状態や脳機能状態の解釈には、理学の視点が必要であり他大学の先生の指導を仰いでいます。私の専門は看護学・助産学ですが、分野を超えて医学、看護学、工学、理学を融合させたトランスレーショナルな研究(基礎から臨床へ橋渡しとなる研究)を行っています。そして、これらの研究成果は国内だけではなく海外への発信も続けています。
基礎から臨床まで切れ間のない看護研究の実践が私の目指す姿です。他にも「疲れない授乳姿勢の科学的な提案」、「安全な抱っこ紐を設計するための指針の構築」など、お母さんが具体的に困っていることの解決を目指し、その解決のために異分野の研究者だけではなく、企業、想定しているユーザーの団体の方々とも協力しながら研究を進めています。母子を含めた家族が健やかに生活していくこと、それが私たちの願いです。
▼関連するSDGs
3 すべての人に健康と福祉を
5 ジェンダー平等を実現しよう