大空は風力エネルギーの宝庫-高空風力発電をめざして(機械工学科 教授 大久保博志)
高空風力発電は、凧やグライダーを用いて上空の豊かな風エネルギーを捉え発電する新技術です。神奈川工科大学では、風車を浮上させ地上の発電機に動力を伝達する独自のシステムを開発し、実証試験を行っています。
風力エネルギーは太陽光などとともに地球温暖化を防止する安全で豊かな再生可能エネルギーとして注目されています。先端的な取り組みを進めている欧米では、航空宇宙技術を用いて高空の風力エネルギーを利用する新技術の開発が進められています。上空では地上よりも風速が大きく安定しているため、豊かな風力エネルギーを利用することができます。また、地上や洋上の大型風車に比べて巨大な支柱構造が不要で、軽量で小型の発電システムの開発が可能です。さらに、台風などの非常時には地上に格納して、災害後の非常用電源として利用することもできる利点があります。
神奈川工科大学では図1に示すように、凧やグライダーを用いて垂直軸風車(風向と回転軸が直交する風車)を浮揚させ、風車と地上に設置した発電機をループ状テザー(ワイヤ)で接続することにより、風車の動力を発電機に伝えて発電するシステムの研究開発をしています。地上の垂直軸風車では回転軸を上下方向にするのが一般的ですが、このシステムでは地上への動力伝達がしやすいよう水平方向に支持しています。
凧に搭載して浮揚することができる軽量な風車(直径600㎜×幅650㎜)を開発し、発電性能やテザーによる動力伝達性能を確認するため風洞(風速を自由に変えることのできる試験装置)を用いて性能試験および発電試験を実施しました。また、2基の風車を一つの軸に配置した試作モデルを用いてフィールド実証試験も行っています。凧(スレッドカイト)に吊り下げた風車をトラックで牽引走行することにより、一定風速での発電を実証し、走行無しで風車を浮上させて発電ができることも実証しています。現在までに得られた発電量は未だ少ないので、凧のより安定な飛行や発電量の大幅な増加を図るための飛行制御などが今後の課題です。
機械工学科 大久保博志教授
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