リアルお家シミュレーションシステム(スマートハウス研究センター 特別研究員 関家 一雄)
スマートハウス研究センター 関家 一雄 特別研究員
太陽光発電は、高い固定価格で売る時代から、蓄電池と組み合わせて自分の家で消費する時代に変わりました。天気予報を使った有効な制御方法を開発できるよう、家をシミュレーションするシステムを開発しています。
再生可能エネルギー普及のため、FIT(固定価格買取制度)という、太陽光発電を高価格で電力会社が買い取る制度がありました。しかし固定価格の期限が切れると買取価格が下がるので、太陽光発電は自家消費する方が経済的になります。太陽光発電は日中しか発電しないので、家庭で自家消費しようとすると、蓄電池などエネルギーを溜める機器と組み合わせて使うことになります。先進的な一戸建ての家は、それらを制御するHome Energy Management System(HEMS)を取り入れるようになってきました。
本研究のリアルお家シミュレーションシステムは、その制御方法を開発する際に役に立つ道具です。HEMSの制御対象は、家庭内のエネルギー消費量が大きい機器(例えば、エアコン、給湯器など)や、エネルギーを創ったり蓄積したりする機器(太陽光発電、蓄電池など)です。その制御には、ECHONET Liteという日本発で国際標準の通信規格が用いられます。
太陽光発電は天気に左右され、また家庭の電力消費パターンは家族構成や生活様式で大きく変わります。最適な制御方法を見つけるためには、実験でその制御方法を試してみなければなりません。しかし実際の機器で無数のパターンを実験するのには無理があります。天気は思い通りにはなりませんし、24時間分の電力消費パターンを実際の機器で実験したら1つの制御方法を試すだけで丸1日かかってしまいます。リアルお家シミュレーションシステムは、それらを全てコンピュータ上で計算するので、実際の機器を使わなくても制御方法の実験ができるようになります。そしてコンピュータ上の計算ですので時間を加速して処理すれば、24時間分の実験を10分間程度で終わらせることができます。HEMSを開発する技術者には大変有効な道具です。
本研究は、家電メーカやハウスメーカなどでHEMSを開発する技術者たちに効率的な開発のための道具を提供して、再生可能エネルギーの有効利用を促進し、ひいては地球温暖化防止に貢献することを目指しています。