3Dプリンタ造形物への情報埋め込みの研究(情報ネットワーク・コミュニケーション学科 教授 上平 員丈)
3Dプリンタでモノを造形するときに造形物内部に情報を埋め込む技術を研究しています。この技術により3Dプリンタ造形物を高機能化、高付加価値化でき、その応用範囲を飛躍的に拡大させることができます。
情報ネットワーク・コミュニケーション学科 上平員丈 教授
3Dプリンタによるモノづくりでは、作りたいモノの設計データを入手すれば、これをパソコンから3Dプリンタに入力するだけでだれでも簡単にモノを製造することができます。まるで、パソコンで画像データをプリンタに入力して画像をプリントするのと同様です。このため、3Dプリンタは将来、製造業の姿を大きく変革する可能性があるといわれています。すでに、3Dプリンタは新製品開発時のモックアップや各種機械の交換部品やなど産業分野で広く用いられています。また、個人用としてもフィギュアなどの置物などにも使われています。
しかし、これらの造形物はいずれもその形状にのみ価値があり、それ以外の価値や機能は特に有しておりませんでした。したがってその用途は限定的となっています。我々は、3Dプリンタで製造されるモノの中に情報を埋め込むことができればIoTなどでの利用も可能になりその応用範囲は一気に膨らむと考えています。
情報を埋め込む方法として、ICチップなどを埋め込む方法がありますが、この方法では情報を埋め込むために別部品が必要で工程数やコストも増加し、だれでもが簡単にモノを造れるという3Dプリンタの特長が失われます。そこで、我々は3Dプリンタが設計データに基づいて材料を下から積み上げながらモノを造形する積層造形とよばれる製法を用いる点に着目しました。この製法によれば造形物の外形だけでなく内部も任意の構造に形成できます。そして、内部に情報を表現する微細なパタン群を形成することにより情報を埋め込む方法を提案しました。
本研究の基本コンセプトを図1に示します。埋め込む情報が付加された造形物の設計データが3Dプリンタに入力されると、設計データにしたがってモノが造形されますが、同時に設計データに付加された情報にしたがって内部に情報を表現するパタンが形成されます。埋め込んだ情報は外部から非破壊で読み出します。これまでの研究で、近赤外線カメラやサーモグラフィーにより内部構造を解析することにより、埋め込んだ情報を読み出せることを確認しております。
また、最近、図2に示すような磁性材を配合した微小な領域を内部に形成し、この領域を外部から磁化することにより、3Dプリンタでモノを造形した後でも、情報を書き込んだり、書き込んだ情報を書き換えたりできる方法の研究も進めております。