ヘルスケア・モニタリングシステムの開発(ロボット・メカトロニクス学科 河原崎徳之 教授)
高齢者にとって日々の健康管理は重要であり、継続的に体調を管理するためには、簡便で楽しい方法が望まれます。本研究では、高齢者の体調を管理するヘルスケア・モニタリングシステムの開発を進めています。
ロボット・メカトロニクス学科 河原崎徳之 教授
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本研究は、高齢者の体温、脈拍数、血圧、心拍数などのバイタルサインをセンシングし、その情報をネットワークにより、外部の医療機関などの管理者に伝えるヘルスケア・モニタリングシステムの開発を目的としています。具体的には、人がシステムの温度センサや脈拍センサに触れることで、バイタルサインデータを制御用のマイクロプロセッサで取得し、さらに上位のプロセッサでデータを転送するシステムです。
このように健康状態をモニタリングするシステムは、個人用にはいくつか開発されていますが、本システムは、介護施設などに設置し、複数の利用者の使用を想定しています。そのため、使用者の特定を画像処理により顔認識するようにしました。
また、高齢者が簡単に使用できるよう、システムの操作はタッチパネルをタッチすることで行い、バイタルサインの取得も各種センサに指を接触させることで行うように工夫しました。取得したバイタルサインデータは、サーバー上の特定のページに送られ、IDとパスワードにより許可された管理者だけが見ることができます。さらに、特定の管理者が健康状態を判断した結果をメッセージとして、使用者に提示することができます。本システムの概要を図1に示します。
図2にシステムのハードウェア構成を示します。本システムで取得するバイタルサインデータは、脈拍数、酸素飽和度(SPO2)および体温の3種類です。脈拍数センサは光学式脈波センサ(BH179GLC)、 SPO2センサはMAX30100および赤外線温度センサGY-906を使用しています。それぞれ、システムに搭載したセンサに指を接触させることで、センサデータを取得できます。バイタルサインデータの取得は、マイクロプロセッサArdiunoで行います。
また、センサデータの平均値処理、画像処理による使用者の認識、データの管理者へ送信および結果の提示は、マイクロプロセッサRasberryPiで行います。取得したバイタルサインデータは、サーバー上の特定のページに送られ、許可された管理者だけが見ることができます。
使用者の特定は、画像処理による顔認証により行います。画像処理は、オープンソースライブラリのDLIBを使用し、顔検出、顔のランドマーク検出および表情判断を行っています。図3に脈拍数の取得および顔認証の画面を示します。
図3 脈拍数の計測画面
本システムの動作検証実験を行いました。実験で行ったのは、バイタルサインのデータの取得、および顔認識です。実験条件は、室内環境であり、被験者は3名、各人の実験回数は10回でした。実験の結果、 バイタルサインのデータ取得が正確にでき、さらに、画像処理による顔の認識率は約98[%]でした。今後は、各種センサを人型ロボットの腕や手に取り付け、ロボットに触ることでバイタルサインをセンシングできるシステムに改良していく予定です。