胎動計測による胎児の成長監視システムの開発(情報メディア学科 小坂崇之准教授)
胎動を検出して、胎動に異常があれば病院への診療を促す研究に取り組んでいます。
情報メディア学科 小坂崇之准教授
われわれは誰しも母親の胎内で命を授かります。精子と卵子が結びつき、生命のもとである受精卵になり成長を続けます。妊娠期間は、日ごとに大きくなるお腹と胎動を感じながら、生まれてくる子供に思いを募らせる幸せな時間ですが、一方で、最も命が危険にさらされやすい時期でもあります。
胎動とは『母胎内で胎児が動くこと。また、その動き。』と表現されています。
成長過程に合わせて胎動の頻度が増加していくという考え方が一般的です。10回の胎動を感じるまでの時間を計測し特定のチャートに記録する「胎動カウント法」により胎動の頻度を計測し成長具合を計測する手法が一般的です。
妊娠中に、これまで感じていた胎動が急に感じなくなり病院に駆け込むと臍帯が首に絡まって死亡していたという痛ましい事例も報告されており、胎動は胎児の健康のバロメータであるともいわれています。しかし、妊娠は病気ではなく周産期医療の分野では胎動に関する研究があまり行われていないのが現状です。
そこで、私たちは、妊婦さんの胎動に注目し、妊娠週数毎による胎動の場所と頻度を計測することで胎児の成長状況を通知し、異常があれば病院への診療を促すことができるシステムの開発を行っています。
妊婦帯(妊婦さんの腹巻)に複数の圧力センサを配置することにより皮膚表面に現れる胎動の場所と頻度を計測し記録することができる胎動スキャナを開発します。胎動カウント法では妊産婦が主観的に胎動の知覚を行うが、本システムではセンサを用いての客観的な計測が可能になります。妊娠週数毎の胎動の頻度と場所を計測し胎動データベースの構築を行います。胎動スキャナを装着した妊産婦の胎動と胎動データベースに蓄積されたデータを比較することにより、現在の胎児の健康状態を妊婦さんに通知することが可能になります。またなんらかの異常があれば病院への診療を促すことができます。
図1: 胎動スキャナ システム構成図
図2: 胎動データベース
図3: 胎動比較システム
図4: 胎動呈示システム
さらに計測した胎動を体験者に呈示するデバイスの開発も行っています。胎動は子宮内の胎児の状態によって感じる場所が変化します。たとえば臨月になると胎児の頭が妊婦さんの骨盤に固定されるので腹部上部に胎動頻度が増加し、反対に逆子の場合は腹部上部以外に感じることが報告されています。このような体験・経験を、妊娠前にあらかじめ体験し学習させることができれば、実際に妊娠して異常を感じたときに迅速に対応することができます。また、胎動は妊産婦だけの特権であり夫やパートナーは体験することができない。そこで夫やパートナーに対して胎動を提示することができれば生まれてくる子供に対して愛情をもって接することができるのではないかと考えています。