没入型ディスプレイの学習・トレーニングへの応用(情報ネットワーク・コミュニケーション学科 井上哲理教授)
バーチャルリアリティ(VR)技術の一つである没入型ディスプレイを用いた研究を行っています。VR映像がユーザ与える影響を調べる基礎研究とともに、学習や訓練にVR映像を応用する研究を行っています。
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情報ネットワーク・コミュニケーション学科 井上哲理 教授
立体ディスプレイ、バーチャルリアリティ(VR)技術など新しいメディア技術がどんどん実用化されています。また、拡張現実(AR)などのメディアのソフトウェア技術も盛んに研究・応用されています。
ヒューマンメディア研究センターでは、このような新しいメディア技術を駆使して、自然なコミュニケーションを可能とするシステムや人間にとって自然な形で情報を提供できるメディアについて基礎研究と応用研究を行っています。研究メンバーとして、情報通信分野の研究者に加えて、応用面では工学分野やバイオ科学、栄養科学分野の研究者も参加しています。
私たちの研究室では、没入型ディスプレイという、臨場感の高い映像表示が可能なディスプレイに関しての基礎研究と応用研究を行っています。図1に研究室でも使用している代表的な没入型ディスプレイを示します。(a)のマルチスクリーン立体ディスプレイは、ユーザの周りを囲うようにスクリーンが設置させていて、そこに立体映像が投影されるタイプです。中に入り込む感覚で映像を体験します。(b)は、最近話題のヘッドマウントディスプレイ(HMD)で、ユーザが装着するタイプのディスプレイです。ユーザの頭の左右上下の動きに合わせて表示する映像を動かすことで、映像処理的にユーザ周囲の映像を表示できるディスプレイです。HMDも、映像の中に入り込んだ感覚をユーザが持ちやすいのが特徴です。
このような臨場感ある体験が可能な没入型ディスプレイを、学習やトレーニングに応用する研究を私たちの研究室では進めています。CG映像でつくられた仮想空間をまるで本物のように感じることができれば、本物を体験したときと同じような学習・トレーニング効果が期待できます。
図2は、海の魚を観察しながら学ぶことをめざした学習用VRコンテンツの一場面です。実際の魚と同じ大きさに見えるCGモデルを作成して、仮想の海中を泳がせます。ユーザはバーチャルな魚を、手が届くような近い場所で鑑賞できるようになっています。本学の学生に体験してもらうと「魚を手に取れそうだ」「海中にいるようだ」などの感想が得られました。学習効果の評価は今後の研究となりますが、学習に興味を持ってもらう効果は十分にありそうです。
図3は野球のトレーニングへの応用研究で作成したVR映像です。CGで作成されたバーチャルなピッチャーから投げられたボール(CGモデル)を本物の打者が打つというものです。野球場の大きさ、ピッチャーとの距離など実際と同じに見えるように作成されています。本学の野球部員に体験してもらうと、「本物と同じではないがトレーニングには使えそう」といった意見が多く、今後の発展が期待できる研究テーマとなっています。
私たちの研究室では、この他にも高所や地下などの危険個所の体験など、さまざまな応用研究をしています。そして、没入型ディスプレイによるバーチャルな環境が実際の学習やトレーニングに利用されることをめざしています。