太陽光発電システムのホットスポット現象の検出と抑制制御の研究(電気電子情報工学科 板子一隆教授)
太陽光発電システムを運用しながら火災の原因となるホットスポット現象をリアルタイムで検出して発熱を抑制する新しい制御方式を開発
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電気電子情報工学科 板子一隆教授
近年、ホットスポット現象や影による発電電力の低下といった異常報告が増加しており、既設のシステムに対するメンテナンスの重要性が高まってきている。ホットスポット現象とは、低抵抗欠陥セルに影が生じると、発電電力が大幅に低下するとともに、セル温度が非常に高くなる現象である。しかしながら、従来の太陽光発電(PV)システムでは、発電電力の監視は行っているが、発電電力から影やホットスポットの発生を検出できない。
先に、本研究室では既設のPVシステムを対象として、スキャン法を用いてI-V特性からリアルタイムでホットスポットを検出する手法を用い、太陽電池ストリングの異常を監視するシステムを開発した。この方法ではホットスポット現象が検出された場合、発電システムを安全のために一旦、停止しなければならないため、発電ロスが生じる。
そこで、本研究では影などによってホットスポット現象が発生した場合でも、発電しながら発熱を抑制できるような発熱回避システムを新しく提案している[1]。
ホットスポットセルは逆バイアスによって低抵抗欠陥の等価低抵抗RHSに電流IHSが流れることで発熱する。すなわち、低抵抗欠陥はオーミックリバース特性を示す。その基本原理はマルチレベルトラップアシストトンネリング(TAT)である。シミュレーションおよび実験の結果からホットスポットの発熱電力はPVの高電圧側で低いレベルになり,安全電圧区間では発熱電力はゼロになることが明らかになっている。そこで、発熱を抑制し、出来る限り発電電力の得られる発熱回避動作電圧VSOVで動作させることを提案している。図1に、ホットスポットと判定されたストリングのサーモ画像を示す。従来の同図(a)ではホットスポットと判定されたストリングでは、影の生じていたセルの温度が約100[℃] になり、危険な状態であることが確認できる。しかし、今回提案の同図(b)では、ホットスポットセルが発熱しない状態になることが確認できる。以上より,ホットスポット現象が発生しても、システムの動作を止めることなく、影を取り除いたり、パネルを正常なものにリプレイスするまでの間、安全に発電を継続することが可能となると考えられる。
文献[1]板子:特願2018-25880