健康寿命延伸を目指す地域貢献型研究センター
健康の維持増進は、日本の喫緊の課題です。健康課題は、メタボリック・シンドローム、高齢期のロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)や認知症等です。センターは、この課題解決に貢献する研究を進めています。
ロボット・メカトロニクス学科 高橋 勝美教授
健康福祉支援開発センター(以下センター)は、地域住民、特に高齢者を対象に、健康の維持・増進に貢献することができる研究センターとして2004年に設立されました。センターの機能は、日常的な運動介入によって、高齢者の生活習慣の変化やADL(Activity of daily living;日常生活動作)の変化および生活体力の変化のエビデンスの収集と工学技術を用いた生活支援機器等の開発です。
センターでは、設立以来、生活体力(種田、1995)のADLを基本とした体力測定(起居能力、歩行能力、手腕作業行能力、身辺作業能力)や立ち座り能力(椅子立ち上がりテスト、中谷、2002)を用いた脚力の評価を、学生ボランティアを募り様々な施設(スポーツセンター、公民館、福祉施設等)に出向いて測定を行ってきました。その結果を示したのが図1です。加齢に伴う自立生活に必要な能力の変化は、起居能力の低下が最も大きく、次いで立ち座り能力ということがわかりました。起居動作も立ち座り能力も脚力に依存するところが大きく、加齢に伴う脚力低下が床から起き上がったり椅子から立ち上がったり座ったりという生活の基本動作を困難にさせているといえます。
その一方で、高齢者に対し、週1回の60分程度の運動を習慣的に行わせると、起居能力や立ち座り能力は、年齢を重ねても一定の能力を維持することができることがわかりました(図2)。高齢期において、習慣的な運動を生活の中に取り入れることが、健康を維持することには重要で、そのことが健康寿命の延伸に繋がっているという事がデータからわかります。
図3には、脳血管障害で麻痺を患った人の手指関節の拘縮予防のために開発されたパワーアシストハンドと介護者の腰痛予防のために開発されたパワーアシストスーツです。これらの装置は、実用化を目指して研究開発され、特にパワーアシストハンドは、神奈川県「さがみロボット産業特区」商品化第1号と認められています([株]エルエーピー)。
現在のセンターは、高齢期のロコモティブ・シンドローム(日本整形外科学会、2007)に着目し、先進技術研究所で開発している「KAITスマート運動器チェック」を様々な施設で実施し、健康寿命の延伸ためには、運動器、特に筋量低下と筋力低下を予防することが大切であることを啓発しています。また、パワーアシストハンドについては、実際の障がい者に利用していただき、手指関節機能へのリハビリ効果を検証するとともに、スマートロボティクス研究開発センターと連携をして、障がい者により使い易いリハビリ機器として改良を試みています。