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太陽エネルギーを有効利用する上部集熱式サーモサイホン制御システムの開発(機械工学科 教授 川島 豪)

再生可能エネルギーの代表は太陽光発電であるが、太陽エネルギーの15~20%程度しか使えていない。そこで、お湯など熱として使うエネルギー源として太陽熱を有効利用するシステムを最先端の制御技術を使って開発している。

機械工学科 川島 豪 教授

2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震とそれにともなう津波による東日本大震災において福島第1原子力発電所が事故を起こし、日本における電力供給のあり方が問われ,再生可能エネルギーの一層の普及促進が求められるようになりました。再生可能エネルギーの利用は太陽光発電が主流ですが、太陽エネルギーの15~20%程度しか使えていません。

そこで私達はお湯など熱として使うエネルギー源として太陽熱を有効利用すべきと考えています。日本では太陽光発電が普及する以前にお風呂用に太陽熱を利用した温水器が流行しましたが、メンテナンス、地震の多い日本の木造家屋の屋上に重い温水器を載せることによる強度の問題等により廃れてしまいました。

本研究では,新しい太陽熱利用システムとして、外部電源を使わずに熱移動できるサーモサイホン(熱サイホン)、特に屋根の上に設置した太陽熱集熱器から地上に熱エネルギーを移動することを目的とした上部集熱式(トップヒート式)サーモサイホンに注目し、その問題点を解決して普及させることを目指しています。図1に上部集熱式サーモサイホンの概念図を示します。加熱されたお湯は密度が小さいので上に溜まりますが、このシステムでは管内の作動流体が沸騰するときにできる蒸気の浮力により、外部電源(ポンプなど)を使わないで軽い温かいお湯を下、例えば1階の床下に移動させることができます。

 

図1 上部集熱式サーモサイホンの概念図 (神奈川工科大学 先進太陽エネルギー利用研究所のホームページより: https://www.kait.jp/hrc/status.html )

サーモサイホンはこのようにすばらしいシステムですが、太陽エネルギーの入力が小さいとき、状態が振動的に変化してしまいます(図2参照)。このような状態が続くと、配管等が高温になったり低温になったりするだけでなく、空焚き状態になり熱疲労により故障したり、寿命が短くなります。そこで、制御システムを設計し、インプリメントすることで、図3に示すように状態を安定化させることができました。しかし、制御システムを作動させるには外部電源が必要となります。そこで、エネルギーの地産地消の理念の元、エネジーハーベスティング、すなわち太陽光発電、さらには凝縮器における熱移動に注目して熱発電素子(ゼーベック素子)による発電を提案、研究しています。

 

図2 上部集熱式サーモサイホン模型における不安定現象

 

図3 上部集熱式サーモサイホン模型における制御結果

IoTの普及に伴い、それらの機器の電源をエネジーハーベスティングにより供給することが求められています。エネルギーは人間が生きていくうえで不可欠なものです。したがって、エネルギーに係わる研究は尽きることがありません。神奈川工科大学の先進太陽エネルギー利用研究所では、機械工学科、電気電子情報工学科、情報工学科、自動車システム開発工学科などの教員が連携を取り、エネルギーの地産地消、エネジーハーベスティングを始め、エネルギーに係る色々な問題を学生さんと一緒に解決しています。

機械工学科 振動システム実験研究室(川島 豪教授)紹介ページ
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