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広帯域・低遅延リアルタイム配信処理プラットフォームの開発に向けて(先端工学研究センター、丸山特別研究室)Interop Tokyo 2022にて400Gbps対応エッジ装置を用いた8K映像処理実験に成功-情報ネットワーク・コミュニケーション学科の学生が活躍-

先端工学研究センター丸山特別研究室と、情報ネットワーク・コミュニケーション学科の瀬林研究室、岩田研究室は、光ファイバの広帯域伝送能力に着目し、ハイビジョン映像の16倍の解像度を持つ非圧縮の8K超高精細映像を伝送・蓄積・配信するシステムの開発に取り組んできました。非圧縮の8K超高精細映像は24Gbpsや48Gbpsの伝送帯域を必要とします。48Gbpsは、DVDディスク1枚が0.8秒で送れてしまう速度です。このような広帯域データをネットワーク上のクラウドと複数のエッジ*1が連携することで、リアルタイムで低遅延な処理を可能にする挑戦的なテーマです。現在8K並みの超高精細映像の制作には、高価なハードウェア専用機を用いたローカルなシステムでしか行うことができませんが、本研究の技術を用いることで、誰でもネットワーク上で超高精細映像の制作・配信が可能になる事を目指しています。

2021年度からは本技術を発展させるため、大同大学、琉球大学、ミハル通信株式会社と共同で、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT:エヌアイシーティー)のBeyond 5G (B5G)研究開発促進事業のシーズ創出型プログラムの委託研究*2を実施しています。B5Gというのは、2030年頃に導入が見込まれる現在の5Gの次世代携帯技術の事で、無線で光ファイバに迫る広帯域伝送を実現します。我々はこれを支える高速エッジやクラウド処理技術を提案しています。近い将来、モバイル端末で超高精細映像を見られるようになれば、誰でも、そしてどこにいても超高精細映像の制作・配信ができるようになるでしょう。詳しくはこちら(https://www.youtube.com/watch?v=q05pXWuOzMs)もご覧ください。

本研究の一環として、以下のような実証実験を実施しました。
――――――――
Interop Tokyo 2022にて400Gbps対応エッジ装置を用いた8K映像処理実験に成功
-情報ネットワーク・コミュニケーション学科の学生が活躍-

2022年4月に大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII:エヌアイアイ)が運営する学術ネットワークがSINET6*3に移行したことを機に、本学ネットワークは最寄りのSINET6接続点として、相模原DC(データセンタ)に100Gbpsで接続したネットワーク環境に移行しました(図1)。この際、我々の研究プロジェクト用に相模原DCのラックに400Gbpsという広帯域ネットワークに接続されたエッジ実験装置(図2)を学生と共に構築しました。

この実験装置を用いて、2022年6月15日~17日に幕張で実施されたInterop Tokyo 2022というネットワーク技術展示会に、ミハル通信株式会社と共同でデモンストレーション展示を行いました。そこで全国に分散したいくつもの8K映像ソースを、上述した相模原DCのエッジ装置を用いてネットワーク経由で自在に切り替え、色変換を行い配信する実験に成功しました。具体的には、ブース内カメラ、神奈川工科大8Kカメラ、沖縄宜野座8Kカメラ、北陸のStarBEDに構築した2つの8K映像サーバなど多地点から、異なるフォーマットの8K映像(8Kデュアルグリーン:8K-DG 24Gbps,フルサイズ8K 48Gbpsなど)を、端末で編集作業をしている制作者の要求に従って瞬時に切り替えると同時に、切り替え後の8K映像のフォーマット変換を無劣化で提供し、さらにはカメラ毎に異なる色彩調整(カラーコレクティング)をリアルタイムで行うシステムを構築し、デモンストレーションしました。


フォーマット変換や色彩変換には相模原DCのエッジ装置のPCサーバ内に構築したソフトウェアベースのパケットスイッチを用いました。図3に示すように、IP入出力処理と(A)8K-DGを8K RGBに変換する処理,(B)8K RGBの中で色彩調整,(C)8K RGBをフルサイズ8Kに変換する処理を組み合わせて実装し、リアルタイムで動作可能である事を実証しました。このようなエッジ装置の複数の映像処理機能がネットワーク内で共用できるようになると、映像編集拠点毎に集約していた映像処理機能は不要になり、誰でもどこからでもネット上で超高精細映像の制作・配信可能な環境の実現に向けて大きな一歩を踏み出せました。

また神奈川工科大ブース内では、共同研究先のミハル通信の8K低遅延圧縮伝送装置を用いて、沖縄のサンゴ研究機関である琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設とのリアルタイム掛け合いも行い、ネットワーク帯域に応じて圧縮配信系と連携するコンセプトモデルとして展示実験を行いました。


本システムは、沖縄、相模原DC、神奈川工科大と広域に跨るシステム(図4)であり、学科の学生諸君が、システム構築・検証、当日の運用を進めました。また、様々な年次の学生が説明員として積極的に活動したことで、展示実験を成功裏に終えることができました。

なお本実証実験は、NICT、NII、Interop会場内のShowNetをはじめとする複数の関係組織との共同で、400Gbps/100Gbpsの広帯域国内回線を用いて実施しました。今後は、本技術を発展させる事で、手持ちのPCをネットワークに接続するだけで、誰でも8K映像編集・配信が可能となる新たなメディア制作手法の確立にむけて研究開発を進めていきます。

■ パンフレット

https://www.kait.jp/data/pdf/InteropTokyo2022.pdf

*1 エッジ:端末とクラウドの間に配置したコンピューティングリソースを示す。端末に近いためリアルタイムな処理を得意とし、処理後の大容量なデータをクラウドに格納するような機能分散を行う。
*2 本研究成果の一部は、NICTの委託研究(採択番号03101)により得られたものです。
*3 SINETは、学術情報ネットワークで、日本全国の大学、研究機関等の学術情報基盤として、NIIが構築、運用している情報通信ネットワークです。2022年4月よりSINET6として本格運用を開始しています。

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