太陽光発電システムにおけるリアルタイムパネル異常診断法の開発(電気電子情報工学科 板子一隆教授)
当研究室では,太陽光発電システムの発電電力の大幅な低下や火災などを引き起こす要因となるパネルの異常をリアルタイムで診断する新しい方法を開発しています.
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近年、日本ではFIT制度(固定価格買取制度)の実施により、太陽電池パネルの生産数及び導入数が増加しています。それに伴って、設置から年数が経過したパネルの異常報告も増加の傾向にあります。特に、火災を引き起こす深刻なものであるホットスポット現象や、落ち葉や汚れといった影による発電電力の低下などの問題が報告されています。
電気電子情報工学科 板子一隆教授
このホットスポット現象とは、欠陥セルに長時間影が生じると、セル温度が高温になる現象です。このホットスポット現象によって、表面樹脂の変形やセルの破壊、火災などを引き起こす危険性があります。従来のホットスポット診断法として、サーモグラフィによる診断がありますが、労力や診断に時間を要する等の問題がありました。他にも、国内外で多数の研究報告がありますが、太陽光発電システムを運用しながら診断することはできませんでした。
先に、当研究室では主にパネルを設置する前のホットスポット診断法として、プロジェクタを用いた診断法を科研費の助成により開発しました。しかし、ホットスポットは設置前の診断時に検出されなくても、設置後の運用中に生じる危険性があるため、異常を素早く検出し対処して被害を最小限にとどめる必要があります。また、正常なセルに対して影が生じた場合でも発熱はしませんが、発電電力が大幅に低下してしまうため、迅速な対応が要求されます。さらに、平成29年の改正FIT制度の施行に伴って、システムの設置後にも定期的なメンテナンスが義務化されているため、既設のシステムを運用しながら異常診断できることが望まれています。従来の太陽光発電システムでは、発電電力の監視は行われていますが、発電電力から影の発生やホットスポットの判別は出来ませんでした。
そこで、当研究室では、太陽電池ストリング(複数枚のパネルが直列に接続された状態)の動作解析を行い、さらに太陽電池ストリングに対して、影やホットスポットの発生を監視する新しい異常診断法を開発しました。すなわち、太陽電池のI-V(電流-電圧)特性を適切な間隔でスキャンし分析するリアルタイム異常診断システムの開発を行い、その有効性を検討しています。
この方式は既設の太陽光発電システムの太陽電池アレイとパワーコンディショナの間に新たに開発した異常診断ユニットを挿入して運用しながらリアルタイムでそれぞれの太陽電池ストリングのI-V特性を分析して異常を知らせるものです。
本開発手法は、当研究室がこれまで産業界も交えて取り組んできた太陽電池の最大電力点追従制御である新型MPPT制御方式(スキャン法)および部分影によるセルの診断という独創的手法であり、太陽光発電システムのO&Mの必須項目となり得、太陽光発電の信頼性・効率の向上・コスト低減、更には今後の主要なモニタリング方式の必須技術・システムとなる可能性が期待できます。