人工知能による次世代に向けた画像情報システムの探求(電気電子情報工学科 武尾英哉教授)
CTやMRIで代表されるように,多くの病院では医用画像のディジタル化が進んでいます.最新のAI技術を使って,医用画像の認識システムや画像診断支援技術を研究し,医師の診断のサポートに貢献しています.
電気電子情報工学科 武尾英哉教授
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医師の診断を支援するコンピュータ支援画像診断(CAD: Computer Aided Diagnosis )の研究がされている.CADとは,医用画像を計算機を用いて解析し,病変の疑いのある候補を抽出し表示することで医師の診断をサポートする機能であり,第二の意見(セカンドオピニオン)とも呼ばれている.下記ではCADの一例を示す.
胸部CT画像を用いた胸水領域と圧迫性無気肺領域の分離計測
肺の中に水が貯まってしまう胸水貯留は,心不全,肝硬変,肺炎,癌など様々な原因により発生する.その増加した胸水の胸腔内の占拠性病変が気管支を圧迫するとその末梢部分(肺胞)は無気肺となる.胸水や無気肺になると,肺を圧迫したり肺胞が水気を帯びて酸素交換ができなくなることから呼吸困難を引き起こす可能性があり,また無気肺は肺炎の重篤化につながるため早期の治療が必要となる.従来の単純X線画像(いわゆるレントゲン写真)による診断では,胸水領域と圧迫性無気肺領域の境界の識別は非常に困難であった.
本研究では,胸部の造影CT画像を用いて胸水領域と圧迫性無気肺領域の識別を行い,自動的にそれぞれの容積を計測する手法を提案する.定量化を行うことで病状の進行度や治療の経過を数値的に判断することが可能となる.肺空気層領域の抽出,肋骨情報からの肺輪郭検出,心臓領域の除去を行い無気肺領域と胸水領域のみを抽出し画像を精査して特定部位の容積を自動計測する. 具体的には,CT画像の各スライス(図1のような断面)画像からAI技術を用いて自動的に胸水領域を抽出し(図2),それを重ねあわせることで3次元的に胸水領域と空気層に分離する(図3と図4).AIはDeep Learningと呼ばれる深層学習を用い,画像を小ブロックに分けて,それが胸水領域なのか空気層領域なのかを判別させる.判別器はDeep Learningによって作成するが,予め正解の分かっているたくさんの画像(これを学習データや教師データという)を用いて学習しておく.
表1に示すように,健常者と非健常者(一般的に胸水比5%以上)を定量的に分けることができるようになった.