先進技術研究所

第四期研究テーマ 成果概要

地球温暖化抑制のための非可食性バイオマス資源からのバイオPETの生産の社会実装

研究代表者応用バイオ科学科 仲亀誠司教授

実現する未来

■CO2削減による地球温暖化の抑制
■農村地域における農林業の活性化

社会的背景・課題

バイオマス資源の活用によるCO2排出量の削減
バイオマス資源の活用によるCO2排出量の削減

産業革命以降の化石資源の利用により、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が年々増加しています。大気中のCO2濃度が高くなると温室効果による地球温暖化が引き起こされて、陸上の氷河/氷床が融けること等に起因する海面上昇や、気候・植生の変化等の悪影響が生じることが予測されています。また日本の農村地域においては、過疎化や高齢化が進行しているという課題があります。

地球温暖化を抑制しながら農村地域の活性化を行うための施策として、農村地域で発生した間伐材や製材工場などで発生したバイオマス資源の活用が図られています。バイオマス資源は光合成により成長することができる動植物のことで、木材や草などが該当しますが、バイオマス資源は光合成により大気中のCO2を固定できるため、化石資源を利用するよりもCO2排出量を抑制できると考えられています。現在日本におけるバイオマス資源の利活用方法としては、バイオマス資源を直接燃焼することによる熱や発電としての利用が多く行われています。バイオマス資源を材料(マテリアル)として利用せずに、こうした熱や発電としての利用が多い理由としては、バイオマス資源が物理的に強固であり、多成分で構成されるために、マテリアルとして利用しようとした際の製造費用が高くなることがあげられます。これを解決するためには、需要の増加が見込まれる付加価値の高い製品の製造を、バイオマス資源から製造する必要があります。

課題解決に向けた研究開発

本研究では飲料用ボトル、衣類、フィルムなどに利用されているポリエチレンテレフタレート(PET)の原料であるテレフタル酸を、バイオマス資源から生産することにより、地球温暖化の原因となるCO2排出量の削減と農林業の活性化を目指しています。

テレフタル酸の世界需要は2017年においては、6,200万トン/年でしたが、2023年には8,000万トン/年まで増加する見込みです。バイオマス資源からテレフタル酸を製造する研究開発は、様々な企業や研究機関で行われていますが、熱による反応を行う化学プロセスを利用する技術が多いため、テレフタル酸を製造する際のエネルギー使用量が多くなる可能性があります。また競合技術では製造時の製造工程数が多いため、設備費用が高くなる可能性があります。一方、本研究で取り組んでいる製造方法では、バイオマス資源からテレフタル酸を製造する際に常温で反応が進む微生物による発酵法を利用するのに加え、製造工程数が少ないために、競合技術と比べて製造エネルギー使用量と製造コストを抑制できるポテンシャルがあります。将来的には石油由来のテレフタル酸と同程度のコストを目指していますが、これを達成するために、テレフタル酸の製造に適したバイオマス資源の選定、菌株の改良、大量生産技術の確立などについて取り組んでいます。

バイオマス資源を利用したテレフタル酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造法
バイオマス資源を利用したテレフタル酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造法

特許・研究助成・受賞等

特許

「バイオマス資源からのテレフタル酸の製造方法及びバイオマス資源からのポリエステルの製造方法(PCT/JP2022/5192)」

研究助成

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター
スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)
課題名「農林業活性化のための未利用系バイオマス資源からのテレフタル酸ならびにポリエステル製造技術の事業化」
フェーズ0(2021~2022年度)、フェーズ1(2023年度)

受賞

SBIRアグリフードピッチ2022「ブレークスルーテック賞」(2022.4.25)

研究者紹介

応用バイオ科学科 仲亀誠司教授
研究代表者
応用バイオ科学科
仲亀誠司教授
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