AIとIoTを活用した「地域健康診断システム」の開発
社会的背景
第4 次国民健康づくり対策、健康日本21(第2 次)では、健康寿命の延伸・健康格差の縮小が重要視されている。2007年に日本臨床整形外科学会は、介護が必要となる要因の一つに「運動器の障害」を挙げ、ロコモティブ・シンドローム(以下「ロコモ」)の対策が必要であるとしている。
また、2014 年9 月、日本学術会議臨床医学委員会運動器分科会において、「超高齢社会における運動器の健康 ―健康寿命延伸に向けてー」の提言で、①運動器の健康の重要性に関する社会への啓発活動、②運動器学に関する学問の推進、③健康寿命延伸に向けた運動器学の総合的研究支援体制の構築、④運動器の健康の指導を実践する人材の育成、⑤運動器検診に関するエビデンスの構築、⑥運動器障害者の身体活動低下に起因する健康障害の予防、を提言した。
神奈川県の健康施策
神奈川県では、平成26 年10 月「未病を治すかながわ宣言」に基づき、高齢者等を中心に、健康寿命の延伸を図る取組みを進めている。ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室では、「未病の改善」をスローガンに、県下の市町村に「未病センター」の設置を促し(2016 年現在14 箇所)、「健康データの見える化」を進めているが、「ロコモ」に関連する運動器の機能測定は行われていない。
「未病センター」の測定項目は、血圧、骨健康度、身体組成、血管年齢、脳年齢であり、メタボリック・シンドロームに関連する内容である。これらの測定項目は、ほとんどが1 年に1 回行われる一般検診やメタボ検診データに比べ簡易に測定でき、メタボ予防の目安のデータとしては、役立たせることができる。
スマート運動器チェックシステムの開発
本プロジェクトでは、「スマート運動器チェックシステム」を開発する。「スマート運動器チェック」は、ロコモチェックに加え、身体組成として筋肉量と骨密度、筋力として立ち上がり筋力、移動能力としてマーカーレス動作解析システムを用いた歩行動作、認知機能としてストループ検査から構成する。得られたデータは、クラウド上で一括管理し、スマートフォン等を活用した「健康アプリケーション」で「健康データの見える化」が可能となる。「スマート運動器チェックシステム」は、クラウド上に集積されたデータは、artificial intelligence(AI)を用いて測定結果の自動診断を行う(右図)。
地域健康診断システム普及
「未病センター」と連携した「スマート運動器チェックシステム」は、地方自治体、地域の自治会、保健センター、地域包括支援センター、病院(リハビリセンター)、民間企業への普及を目指し、それぞれの組織と連携し、健康イベント等により「スマート運動器チェック」を実施する活動を推進する。「スマート運動器チェック」を通して、様々な組織・団体と連携し、地域住民の健康維持・増進に寄与する「地域健康診断システム」を構築する(右図)。