進行状況
太陽エネルギーシステム研究開発センター大型設備
本研究開発センターでは、4階建ての実験棟の屋上に出力10.8kWのソーラーパネルを備え、発電量、日射量、パネル裏面温度、風向、風速等を測定し、多結晶型ソーラーパネルとシリコンを使用しないCIS型ソーラーパネルの発電特性を計測すると共に、発電されたクリーンな電力を電気自動車関係の研究に使用するLi-ion電池の充電、燃料電池関係の実験に使用する水素の製造に利用している。このとき、研究成果であるオリジナルのMPPT(Maximum Power Point Trackerh: ソーラーパネルでの発電量を最大にする装置)を介すことで発電効率の向上を図っている。また、余剰電力は、パワーコンディショナーを介して学内の電力として使用している。
教授 森 武昭/教授 板子一隆(電気電子工学専攻/電気電子情報工学科・ホームエレクトロニクス開発学科)
● 太陽光発電・燃料電池複合システム
図1が従来の独立型太陽光発電システムの電力の流れを示している。太陽電池から最大限のエネルギーを得るためにMPPT制御を行う。通常は電力の平準化のためにバッテリーを挿入して安定な電力を負荷に供給する。このシステムではバッテリーが過充電状態となる前に太陽電池からのエネルギー供給を停止してバッテリーを保護しているため、この余剰電力が有効に利用されていないのが現状である。本研究では、図2に示すように独立型太陽光発電システムにおける余剰電力を水素生成に活用し、その水素を燃料電池に供給して負荷で有効に利用する太陽光発電・燃料電池複合システムを提案し、そのシステムとしての有用性について検討を行っている。このシステムにおいて新しく提案した最大電力点追跡制御方式(瞬時スキャン形MPPT制御)における装置の小型化、低コスト化につながる改良として内部のインダクタンスの低減の検討を行い、大幅に低減可能であることを明らかにした。また、本方式では、部分影が生じた場合でも従来方式と比べて確実に最大電力を取得することが可能であることを実験により実証できた。今後は、瞬時スキャン形MPPT制御を用いて水素を生成し、基本特性を明らかにし、システムとしての最適な制御方法の検討を行う。さらに、燃料電池から最も効率良く負荷に電力を供給するためのコンバータ・インバータ制御システムのためのプログラムを完成させ、最終的には、これらの成果をもとに負荷変動に対応できるバッテリー容量を考慮したシステム全体としての利用効率向上のための設計方法についての検討を行う予定である。
図1 独立型太陽光発電システム
図2 提案する太陽光発電・燃料電池複合システム
教授 吉田博夫 (機械システム工学専攻/自動車システム開発工学科)
● 太陽光・熱ハイブリッドヒートポンプの研究開発
ハイブリッドシステムでは、太陽光発電装置の運転温度が発電効率に大きな影響を与えるとともに、発電によるジュール加熱効果も熱効率に無視できない影響を与えることがわかった。これらの効果を勘案しながら最高の効率をもたらすシステムならびに運転に関する検討が課題である。
● 上部集熱式熱サイホンの研究開発
屋外装置を使用して、外部動力を使用せず高低差4mのもとで熱輸送ができることを実証した。今後、企業との共同研究を視野に、システムの最適化と実用化に取り組む。
教授 川島 豪(機械工学専攻・機械システム工学専攻/機械工学科)
● 自然エネルギーで運行する間歇充電式電気バスシステムの開発
温室効果ガス排出量削減の面からは、自然エネルギーにより発電された電気で走る電気自動車が最も効果的である。しかし、電池重量の制約から電気自動車の1回の充電による走行距離は100 km程度に留まっている。本研究では、バス停ごとに充電することで蓄電装置の搭載量を少なくできる間歇充電式電気バスに着目し、その電力を都市に分散しているバス停留所ごとに発電すれば低密度分散型の自然エネルギーを有効利用できることから、温室効果ガス排出ゼロを目指した公共交通機関の構築を目指している。1年目は、ゴルフカートを用い、キャパシタを蓄電装置として20秒の停車時間および約2mの発進加速時にソーラーパネルで発電されリチウムイオン電池に蓄えられた電力を充電することで、約100秒の走行を繰り返せることを確認した。2年目は、1人乗りの電気自動車を改良してリチウムイオン電池を搭載し、20秒の停車時間および約6mの発進加速時に充電することで、約90秒の走行を繰り返せることを確認した。そして、間歇充電式バスシステムに適した急速充電システムのための蓄電装置の設計法を確立した。合わせて、電気自動車の特徴である回生ブレーキの利かせ方についても検討している。 (参考:T. Kawashima and I. Fujioka, New public Transportation System with Bus Charged Intermittently at Every Bus Stop Using Green Energy (Model Experiment Using Golf Cart), J. Environment and Engineering, Vol.3, No.2(2008), pp.374-384.)
准教授 矢田直之 (機械工学専攻/機械工学科)
● 熱・電気複合型太陽電池システムの開発、実用化に関する研究
太陽電池のエネルギー変換効率(発電効率)は、未だに12%程度であり、その飛躍的な向上はさほど期待できない。そこで、本研究では太陽エネルギーから電気ばかりでなく、同時に熱も回収することで、トータルのエネルギー回収効率を高めるシステムを開発し、実用化に向けての問題点を実証試験に基づいて明らかにした。現在、大型実験装置(10 kW+10 kW)は、岡山県鏡野町(山田養蜂場株式会社)において順調に稼働している。実用化レベルにまで大型化した実験装置において、本システムの改良すべき点が具体的に明らかになり、その成果を踏まえた上で、本学屋上においても、次の大型試験のプロトタイプである小型実験装置(250W+250W)を新たに製作して、熱・電気複合型太陽電池システムの研究を遂行中である。(参考:下野間弓恵、土屋昭、矢田直之、「熱・電気複合型太陽電池システムの実用化に関する研究」、日本太陽エネルギー学会誌、第34巻、第4号、pp.65-70 (2008).)
Fig.1 10kW equipments in Okayama
Fig.2 250W modules in KAIT
准教授 藤澤 徹 (機械システム工学専攻/自動車システム開発工学科)
● 「新型太陽電池を混成使用した場合の出力特性の最適化及び革新的電力制御システム」
初期段階としてp-Si型とCIS型のアレイ出力特性の比較について論じるとともに、混成システムとして東西異方位アレイの検討を行った。その結果、(1)異方位混成において東西の傾斜角5°程度であれば、最大電力点追従制御の問題は少ないことをアレイのI-V特性とP-V特性から明らかにした。(2)検討例の少ないCIS型太陽電池の実変換効率と温度特性を、長期的なフィールドテストにより明らかにした。(3)CIS型アレイの実フィールドデータは公称値より10%以上大きい出力となった。このことはパワーコンディショナの容量を設計する際の注意すべき事象として活かされるべきである。
課題は、光照射効果や入射角、散乱光の影響などの損失分離である。また、東西の異方位アレイについては傾斜角を増した検討が必要である。今後は、壁面および屋上への微結晶Siタンデム型の設置を行うとともに、従来型の多結晶Si型と、薄膜系のCIS型との混成システムについて評価する。日射分布によるアレイ出力特性カーブへの影響を調べ、異種アレイの混成における問題点と必要な電力制御を明らかにしたい。
教授 高橋良彦 (機械システム工学専攻/自動車システム開発工学科)
● 太陽光・水素などの太陽エネルギー利用関連および燃料電池・電気自動車の研究
太陽エネルギーを利用した移動体の研究を行っている。
一つは、太陽電池と燃料電池を搭載して車いすの移動距離を延ばす研究である。従来はバッテリーのみ搭載していたため移動距離が短く、また再充電にも長時間が必要であった。太陽電池と燃料電池を搭載することで、晴天時であれば他からのエネルギー補充なしでも長距離を走行できる。曇りや雨天時にも燃料電池で走行が可能である。現在は、実験装置の試作が完了している。
二つ目の研究は、超小型の燃料電池自動車の研究である。従来、高価な燃料電池を搭載した燃料電池車が開発されているが、コストが高くて実用化は困難と言われていた。そこで、小出力の燃料電池でも走行できる車両を開発している。現在は、実験装置の試作が完了している。
太陽電池と燃料電池を搭載して車いすの移動距離を延ばす研究は過去に例がなく、太陽エネルギー関係のみならず福祉機器の分野でも期待されている。小出力の燃料電池自動車はミニカーの範疇に入り、今後新規の移動手段として期待される。
教授 木村茂雄 (機械工学専攻/機械工学科)
● 現在制作中
教授 田中 博 (情報工学専攻/情報工学科)
● 現在制作中