科学技術の振興と発展に寄与する人材を育成し、人類の幸福に貢献したいという産業人の思いによって設立された神奈川工科大学。これまでも技術企業の中核的役割を担う人材を多く輩出してきた。近年は機械、電気、化学の3領域に加え、2004年に情報学部、2008年に創造工学部、応用バイオ科学部、2010年には栄養分野の学科を新たに設置し、工科系総合大学として時代のニーズに応える人材育成が始まっている。キャリア教育においても全学的なプログラム構築が進んでいる。
多くの講義科目や実験科目が別々に開講されているのではなく、各学科の繋がりを学生が理解して取り組めるように、各教員が連携して科目をユニット化する「ユニットプログラム」を平成24年度から設置。もともと神奈川工科大学が得意としてきたプロジェクト型のPBL(Project Based Learning)学習を柱として、そこで必要となる基礎科目や関連科目を一体化させることで、効率よく理解を深めることを目指している。実践のなかで必要性を感じた専門知識を授業で学んだり、座学で学んだ知識をすぐに実践に活用できることで、技術者としての総合力を身につけさせている。
平成23年度からはクラウドコンピューティングを活用した「キャリアポートフォリオ」の運用をスタート。学生が自分で学習の目標・計画を設定し、授業レポートや課外活動の記録などをそこに貯めていくことで、成長を自分で確認できるようにしている。平成24年度からはキャリア系科目で1年生全員が活用を始めており、学生自身による就業力の向上に寄与している。学生同士がレポートを互いに評価しあう仕組みなども取り入れられている。
これまでも厚木商工会議所、神奈川県内陸工業団地協同組合などと協定を結びながら地域を中心とした技術系企業にインターンシップを行ってきた。しかし、従来は各学科の専門科目として開講され、成績評価などが統一されていなかったため、平成24年度からは一つにまとめ、キャリア系科目の重要な科目として再スタートさせた。大学間の連携で、より長期のインターンシップや学生一人ひとりの希望に沿ったインターンシップの企画、実施を構想している。
産業構造が変わり、技術系人材においても黙ってものをつくるだけではなく、顧客へのプレゼンテーション力を持った「技術営業」や、他国のエンジニアとのコミュニケーションを橋渡しする「ブリッジエンジニア」が必要とされるなど、求められる力も変わってきました。学生たちの就業力を高めるために、まずは教員自身が連携し、科目を繋ぐユニット化を進め、新しい学び方を構築してきました。今は組織で教育力を高めていくとき。大学間の連携でも多くの刺激をいただき、知恵を共有していきたいと考えています。
神奈川工科大学 情報学部情報工学科 学科長 教授 松本 一教